蕁麻疹について

蕁麻疹は皮膚に赤く膨らんだかゆみをともなう皮疹が一時的に現れる病気で、ヒスタミン等の化学物質が症状を起こします。原因は多岐にわたり、しばしば寒暖差、ストレス、特定の食品、薬物などによって誘発されることがありますが、多くは原因不明です。

蕁麻疹は発症メカニズムの違いによって大まかに3つに分けることができます。

  • 突発性の蕁麻疹(直接的な原因なく症状が現れる)
  • 刺激誘発型の蕁麻疹(特定の刺激やアレルギーによって症状が引き起こされる)
  • それ以外の特殊な蕁麻疹

突発性の蕁麻疹

明らかな原因が特定できない、蕁麻疹であり、ほとんどがこのタイプに属します。症状が続く期間の長さによって急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹に分けられます。

・急性蕁麻疹

最初の症状が出始めてから6週間以内のもの。子どもでは、感冒などのウイルス感染に伴って発症する傾向があります。

・慢性蕁麻疹

症状が6週間以上続いているもの。夕方から夜間にかけて症状が出やすく、悪化しやすい傾向があります。発症メカニズムや要因は不明で、症状が数カ月~数年続く場合もあります。

刺激誘発型の蕁麻疹

特定の刺激が加わることによって起こる蕁麻疹です。刺激が加わる頻度によって、1日に何度も症状が出ることもあれば、しばらく症状が出ないこともあります。代表的なものに以下のタイプが挙げられます。

・アレルギー性蕁麻疹

食物、薬品、植物などに含まれる特定物質(アレルゲン)に反応して起こります。通常アレルギーの原因物質を食べたり、それらに触れたりした数分後~1、2時間後に症状が出ます。アレルギー検査により原因が特定できる場合があります。花粉症を合併する場合は花粉食物アレルギーを合併するため、

・物理性蕁麻疹(機械性、寒冷、温熱、日光など)

皮膚に対する機械的な摩擦や寒冷・温熱刺激、日光照射などによって引き起こされる蕁麻疹。刺激の種類によって機械性蕁麻疹」、寒冷蕁麻疹、温熱蕁麻疹、日光蕁麻疹等があります。

・コリン性蕁麻疹

入浴や運動、精神的な緊張によって体温が上がり、発汗に伴って起こる蕁麻疹です。かゆみ赤みを伴った3~5mm大の小さい膨疹または紅斑(こうはん)ができます。この症状は、通常数分から 2 時間以内に自然に消えますが、再び発汗する状況になると同じ症状が繰り返し現れる場合もあります。 

上記以外の特殊な蕁麻疹

自己免疫疾患や特殊な病気を合併する蕁麻疹があります。蕁麻疹様血管炎などは皮膚生検や精査を行い、免疫抑制剤などの治療が必要となる場合もあります。


この様な蕁麻疹のタイプにより、治療方針は少しずつ異なります。

治療は抗ヒスタミン薬を中心とした内服治療が主体ですが、他にもアレルギーや浮腫を抑える内服薬を併用することがあります。抗ヒスタミン薬も多くの種類があり、患者さんにあった薬剤を選択し、適切な量を内服することが大切です。

治りにくい場合は適宜検査を行い、治療を調整する必要があります。

特発性慢性蕁麻疹の注射治療(生物学的製剤)

基本的に適切な抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬を使用しても症状が抑えられない患者さんに適応となります。

ゾレア (オマリズマブ・抗IgE抗体)

蕁麻疹を起す原因の一つと考えられているgEが受容体に結合するのをブロックすることで、症状を抑制します。免疫的な機序でアレルギーを抑制するため、採血を行い、IgEがある程度高値の方が適応となります。

4週間または2週間ごとに皮下注射を行います。12歳以上の方が適応となります。主な副作用は注射部位のはれ赤みなどで、基本的には数日で治ります。稀ではありますが、重篤な副作用としてアナフィラキシーショックがあります。

デュピルマブ(デュピクセント®・IL-4/IL-13受容体モノクロナール抗体)

従来アトピー性皮膚炎の治療に使われていた注射薬ですが、ゾレアで効果の乏しい方・血清IgEが低い方にも効果を認めたことから近年保険適応となりました。慢性蕁麻疹に対しては12歳以上が適応となります。詳しくはこちら

どちらも花粉症や喘息症状に対しても効果があるため、これらを合併している方にもおすすめします。

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